本研究では、楕円曲線と3次体の2-類群に関する研究に引き続き、その一般化として、有理数体上の超楕円曲線のヤコビアンと奇数次代数体の2-類群の関連について調べた。しかしながら、超楕円曲線のヤコビアンを直接とらえるのは困難なので、まず、そのセルマ-群を研究対象とし、イデアル類群との対応がどのような場合に可能となるかを目標とした。その結果、ある条件のもとで、セルマ-群から2-類群への自然な準同型が存在することが示され、さらにそれが全射になるための十分条件を、有理数体上の素点に関する局所的性質を用いて記述することができた。とくに、巡回体の場合、素点2および∞に対する条件が、標数2の素体上の正規底に関する条件に帰着されることもわかった。 次に、奇素数iotaに対して、iota次アーベル体のiota-類群を、ヒルベルトのノルム剰余記号によって定義されるある種の組合せ論的構造を通して調べた。この方法は、種の理論の延長線上にあると考えられる。すなわち、イデアル類群のiota-階数は種の理論によって分岐素数の個数から決定されるが、iota^2-階数についてはさらに分岐素数相互の関係が反映し、その関係から定まる組合せ論的構造によって記述される。実際に、そのような構造がグラフ理論におけるキルヒホッフ行列によって表され、この事実からイデアル類群のiota^2-階数が消えるための必要十分条件を、グラフ理論のことばを用いて表現することができた。さらに、グラフ理論への言い換えにおいて、ノルム剰余記号の積公式が重要な役割を果たすことが判明した。
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