研究の目的は代数体の単数群の構造を相対単数という概念を用いて考察することである。相対単数とは部分体へのノルムをとると1の根になる単数のことである。相対単数を用いると、単数群のうちで部分体の単数で生成されるのはどれくらいかというような相対的な結果を得ることが期待できる。また、代数体の巡回拡大体の構成においては、代数体とそれをクンマー化した拡大体の間の単数群の相対的っな関係が必要になるので、そこに上で得た単数群の構造に関する結果を応用することが考えられる。 昨年度まではアーベル拡大体の場合に研究を進めてきた。この場合は、単数群をガロア加群と見ると、相対単数の代数的特徴付けがきれいに書けて議論がうまくいく。従って、単数群の構造に関するいくつかの結果と、それらの巡回拡大体の構成への応用が得られていた。本年度の課題は、一般のガロア拡大体の場合を考えることであった。この場合は、ガロア群がアーベルとは限らないので、アーベルのときの方法はうまくいかない。そこで注目したのは、一般のガロア拡大体に対し成り立つエルブランの単数定理である。この定理と相対単数の関係を吟味して、相対単数の扱い方の手掛りを得ようと考えた。そして、実際、アーベル拡大体の場合に相対単数を用いてこの定理を証明することに成功し、同時に定理の主張が改良できることも示した。非アーベルの場合については、同様の問題を考えるとき必要になる有限群論の情報を明確にすることを主に行った。 研究成果を論文等の形で発表するために科学研究費補助金で購入したプリンターを用いた(論文は投稿中)。また、科学研究費補助金を旅費に充てて出席したセミナー、研究集会などで他の研究者との情報交換が行えた。特に、有限群論に関して重要な助言を得ることができ、研究の進展におおいに役立った。
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