筆者が交付申請書に記載した研究事項は有機群Gの作用をもつ自由Gホモトピー球面間のG-h-コボルディズムに関する事項を中心に代数的位相幾何学、代数的K-理論に係る諸問題を解明することであった。筆者は平成5年までに同一の自由G-ホモトピー球面間の任意のG-h-コボルディズムが自明となるための障害をWhitehead群のねじれ部分群の中に構成し、その結果を論文"On G-h-cobordisms between G-homotopy spheres"にまとめた。SK_1(Z[G])=0がこの障害が消える為の十分条件であることは、それまでの筆者の研究で解明されていたが、この障害をいわばSK_1(Z[G])の部分群の中に構成したことこそ重大な進歩である。実際この論文ではSK_1(Z[G])≠0でありながらこの障害が解消している有限群Gの例(例えばZ_p×Q_8、ここでZ_pは奇素数p次巡回群、Q_8は4元数群)も併せて提示された。現在の所この障害が消えていない例は知られていないが、このような例の存在を確認することは今後に残された課題であろう。この論文は"Osaka Journal of Mathematics"に投稿し、平成5年秋に受理された。この論文完成にはこの補助金で購入したレクチャー・ノート類で得た知識や、この補助金で参加した研究集会での研究交流が大きな助けとなっている。 また目下の所未完成ではあるが、交付申請書に記載した周期的コホモロジーをもつ有限群に対してのWhitehead群の研究も進められ、Wolfの分類表のタイプIとタイプIIIのものに対しては、そのWhitehead群の決定は完了した。現在の所タイプIVについて研究中である。来年度以後もこの研究は継続し、残る部分の解決を図ることが一つの課題である。
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