本研究ではエネルギー法が適用できない特殊なタイプの非線型波動方程式に対する初期値問題の古典解について、特に基本解の各点評価が難しい空間4次元以上に重点を置いて解析するのが目標であった。本年度中に得られた結果は、当初の予想通り解が爆発するという現象は、次元に関係なくある種の可積分性や方程式の不変性によって決まる本質を見出したところにある。具体的には□u=|u|^P、□u=|ut|^Pという2つの方程式を考えた。与えられた初期値に対して古典解が時間大域的に存在するか、その途中で爆発するかという判定条件を提出するのが目的であった。初期値の台がコンパクトな場合、1<P【less than or equal】P_<0(n)>ならば非存在、P>P_<0(n)>ならば存在というP_<0(n)>という数字の予想は昔からなされていたのであるが、本研究の成果の1つはP=P_<0(n)>のときの今まで複雑な解析を簡単にし、統一的に扱えるようにしたことである。また、初期値の台がコンパクトでない場合はP>P_<0(n)>でも非存在になってしまい、判定条件としては初期値の無限遠方での減衰状態を提出しなければならないことがわかってきた。初期値が0(|x|^<-k>)|x|→∞としたとき、0<k<k^0ならば非存在、k【greater than or equal】ならば存在というk^0の予想がある程度立てることができたのは本研究の最大の成果である。これは一般論で使われる方程式を具体例である種の枠付けをしたことになっており、この方面の研究に対して世界的に見ても大きな貢献になったと思われる。
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