星の集団的生成過程を明らかにする研究の一環として、赤外広視野撮像データによる分子雲中の原始星クラスターの同定を試みようとしている。本研究では、開発中のPtS512x512i素子赤外カメラを岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡に搭載して行った1~2ミクロン帯の試験観測のデータをもとに、分子雲中の赤外線源の検出およびそのカラーや分布の特徴を調べた。画像処理システムの増強により、OBアソシエーションに隣接する分子雲L1204/S140領域のJおよびKバンドの3x3モザイク画像を構成することができ、100個余りの点源について測光データを導出し、光度関数を求めた。初期質量関数を議論する際に重要となる暗い天体については、なお慎重な解析が必要で現在も測光のアルゴリズムを検討中である。さらにJとKを直接除算できるほど位置精度を向上させ、中心の明るいクラスターを包む反射星雲及びそれよりはるかにコンパクトではあるが明らかに広がりを持つ他の少数の天体についても、カラーの情報を引き出そうとしている。これらの若い天体周辺に残存する原始星円盤の解析は、形成の段階を分類する手掛かりを与えよう。 空間情報については、分子雲側に顕著に赤い赤外源が多いことが確認できた。これらの天体が最も初期の原始星候補である。光度関数からも分子雲側の天体群について、星間吸収をはるかに超える赤化量が見いだされ、分子雲の背後にあるのではなく、分子雲中の局所的に密度の上がっている領域(いわゆる分子雲コア)に付随した赤外源であると推測している。今後は分子雲の詳細構造と比較すべく、データを捜索中である。分子雲の骨格部分である密度のやや高いフィラメント状の構造と、赤い天体グループとが位置的に重なっていることを確認したい。
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