1.井戸層の厚さ100nmのZn_<0.7>Cd_<0.3>Se/ZnSe単一量子井戸レーザ構造を、窒素レーザ励起色素レーザ(パルス幅3ns)でストリップ状に励起して、室温においてその発光スペクトルを分光器とCCDカメラの測定系で垂直方向から観測した。ストリップの長さを1および21と変えることによって光利得スペクトルの測定をおこなった。3kW/cm^2の励起強度では励起子吸収端近傍のエネルギー領域において光利得は観測されなかったが、励起強度を増加していくと2.28eV付近から光利得領域が発生し、ピーク波長が短波側にシフトするとともに利得領域が拡大して、100kW/cm^2の光励起に対しては数10cm^<-1>の光学利得が2.36eVに観測された。 2.室温、強励起下においても励起子吸収ピークが存在することを実証するために、発光の励起スペクトルを測定した。その結果、100kW/cm^2(長さ1mmの、端面をへき開した共振器においてレーザ発振が観測される)に対しても、2.42eVに明確な励起子吸収ピークが観測された。このことは、室温でのレーザ発振にも、電子正孔プラズマではなく、励起子が関与していることを示唆している。このことは「不均一幅で広がった励起子系の位相空間充填効果(Ding et al.Phys.Rev.B47(1993)10528)で説明できる。 3.発光の励起スペクトルにおいて、上記の励起子ピークの他に、2.52eVおよび2.69eVに顕著な励起ピークを見い出した。後者はZnSeバリア層の吸収端にあたると考えられるが、前者については現段階ではその起源が同定できない。
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