本年度の成果は、次のものである。 (1)厳密に解ける1次元励起子系について強励起下での吸収、発光スペクトラムが、量子xxzスピン系の相関関数によって表現できること示した。その結果、発光及び吸収強度ピークのシステムサイズ依存性に現れる指数が、対応するスピン系の熱平衡状態下での臨界指数に一致することがわかった。また、フレンケル励起子のボゾンからのずれが、同じくスピン系の臨界指数によって特徴づけられることを明らかにした。さらに、有限温度での揺らぎの効果をスピン系の相関長によって特徴づけた。 (2)2次元励起子系において母体格子の配向秩序が双極子モーメントの配向秩序に与える影響の連続体極限における表式を得た。KTHNY転移前後での吸収、発光スペクトラムを転移点の前後で求め、格子揺らぎのスペクトラムに対する影響を調べた。その結果、2次元励起子系がKTHNY転移に対する極めて良いプローブになること、スペクトルの揺らぎ(幅)は双極子の配向揺らぎが主に影響する事がわかった。 (3)KTHNY転移よりも明確な(1次)相転移であるpolymerization転移、helix-coil転移に対して、励起子吸収スペクトラムを求めた。双極子揺らぎの相関が、相転移前後でのスペクトラムに強い影響を与える事がわかった。特に、励起子の伝搬と光吸収が同じ双極子モーメントを通じて行われるため、従来のグリーン関数の虚部(状態密度)による光吸収スペクトラムの表現は正しくなく、揺らぎの相関まで含めた計算に拠らねばならない事を明らかにした。
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