研究概要 |
本研究の目的は代表的なメタンの圧力誘起のプラスチック相における音速,弾性定数などを決定し,圧力による直接の圧縮に対する,回転-並進相互作用の弾性的性質への影響を調べることである.以下に,本研究により得られた成果を示す. 1.現在使用している90°散乱配置ブリュアン周波数シフト測定装置の光学系を,60°散乱配置での測定が可能な光学系に改良した.また,超高圧力下でブリュアン散乱の方位依存性の測定が可能な70°の円錐状の開口角を持つ圧力発生装置ダイヤモンド・アンビル・セルを開発した.以上の結果,60°散乱配置を用いることによって,より超高圧力下でメタン等の高圧固体のブリュアン周波数シフトの方位依存測定が可能となり,測定圧力領域を約8GPaから20GPa以上に拡張することができた. 2.室温で,メタンを加圧すると約1.5GPaの圧力で液体からプラスチック相に転移する.この共存圧力でメタンの単結晶を作成し,この単結晶に対し約3GPaの高圧力においてブリュアン周波数シフトすなわち音速の方位依存性を測定することに成功した.さらに,我々の開発した結晶方位と弾性的性質を同時に決定する方法を用いて前述の実験データを解析した結果,メタンの弾性的異方性は大きく,低温化でのプラスチック相と同様に,圧力誘起のプスチック相においても分子の回転が並進運動と相互作用を起こし,弾性的異方性に影響を及ぼしていることがわかった.
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