研究概要 |
今年度の研究成果は次の通りである。 1.液体急冷法により作成したAl-Cu-Co系およびAl-Co系デカゴナル相準結晶が中心対称を持たない準結晶であることを、今回新たに見いだした。これは以前われわれの見いだしたAl-Ni-Fe系準結晶に続いて2列目であり、特にAl-Co系準結晶は2元合金として初めての非中心対称準結晶である。CuとCoの組成を変えて調べた結果この相が広い範囲で存在することを見いだし、収束電子回折法を用いて超空間郡を決定した。また、高分解能電子顕微鏡法による観察からこの系では2種類の異なる原子クラスターが存在すること、およびこの2つのクラスターの存在比がCuとCoの組成によって異なるという興味深い現象を見いだした。これらの結果を1993年夏に行われた三つの国際会議(8th Int.Conf. on Rapidly Quenched and Metastable Materials,Sendai(Japan);IUCrXVICongress,Beijin(China);Symposium on Quasicrystals andImperfectly Ordered Crystals,Chendge(China))で発表した。 2.デカゴナル相準結晶の構造は5次元周期構造の3次元断面として記述できる(断面法)。断面法により準結晶の3次元構造を得るプログラムを独自に作成した。これを用いてAl-Ni-Fe系およびAl-Cu-Co系非中心対称準結晶に対する構造モデルを作成した。これをもとに高分解能像のマルチスライス法によるシミュレーションを行い、実験で得た高分解能電子顕微鏡と比較し、比較的よい一致を得た。またこのシミュレーションを通して、加速電圧200kVでは非中心対称性の明瞭な像が得られるのに対し、加速電圧300kV,400kVでは非中心対称性の不明瞭な像しか得られないことを見いだした。これは結像に寄与する反射の違いによる。さらに今後この構造モデルについて検討、改良を加える。
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