研究概要 |
層状多孔質物質ヘクトライトは、17-20A間隔の2次元メゾポア空間を形成している。この空間にフェルミ粒子である^3Heを吸着し、40mK以上の温度での比熱の温度変化および吸着量変化を測定した。この結果を、^4Heの比熱の温度変化と吸着量変化、等量吸着熱の測定結果、ねじれ振り子による超流動密度測定結果と比較することにより、吸着量による^3Heの状態変化を明らかにした。 ヘクトライト1gあたり3.5mmolまでの^3Heの吸着量では、ヘクトライトに存在するNa^+による吸着サイトへの吸着と考えられる。また,3.5mmol/g以上の吸着量では吸着サイト以外の基盤への吸着が始まり、さらに9.5mmol/g以上の吸着量では2層目の吸着が始まると考えられる。1層までの比熱の温度変化および吸着量変化は、^4Heの結果と定性的には一致しており、吸着粒子の量子統計性は現れない。一方、2層目の吸着が始まる吸着量以上では、^3Heと^4Heの比熱は異なった温度変化、吸着量変化をする。^4Heの場合は、2層目の吸着が始まる吸着量を1層と数えると、1.5層以上の吸着量で超流動が現れる。^3Heの場合は、12.2mmol/g(1.3層)以上の吸着量での比熱の温度変化は、60mK以上ではほぼ一定であるのに対し、それ以下の温度では温度が下がるにつれて比熱は小さくなり、60mK以下でフェルミ縮退が起こっていると推察される。比熱測定の温度範囲は40mK以上であるため、比熱が温度に比例するなどのフェルミ液体が示す特徴を確認するにはいたらなかった。もし60mK以下で比熱が温度に比例するとしたら、40-60mKの測定値から^3Heの有効質量は^3He粒子の質量の2.2倍と見積もられる。
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