本年度もこの研究課題の中核をなすサブリミ波ESRは多くの成果を上げた。特にこの研究課題に関連した仕事ではCsCuCl_3の量子効果に起因する磁気相転移をサブミリ波ESRで初めて観測し斯波と二国の理論を支持する結果を得た。また重い電子系と並ぶ強相関系と考えられるCuGeO_3のスピンパイエルス転移は本年度の大きな話題のひとつであったが、この物質のサブミリ波ESRの温度変化の測定はその磁気状態に関してギャップの見積りなど新しい知見が得られた。さらにこの研究課題で制作した30Tパルスマグネットを組み合わせたクライオスタットを用いて転移磁場13Tを超えたM相のESRを観測すればより多くの情報が得られることが期待される。ストリップラインに関してはシリコーンとスタイキャストで制作することに成功した。そこでまずストリップライン法の基礎データを金属人工格子および鉄板を用いて収集した。その結果Co/Cu人工格子では有名な巨大磁気抵抗がきれいに観測されFe/MgO人工格子および鉄板では鉄によるESRが明瞭に観測された。したがってストリップラインのサイズなどの基本的技術はこれからの観測で確立した。その結果当初の予想より大きな試料サイズが必要なことが明らかとなりUPd_2Al_3は現在制作中であるが、ストリップライン法の技術が確立した点では本研究は十分その成果が上がったと考えられる。今後の研究展開としてはUPd_2Al_3はもとよりDyB_6などのf電子系や金属人工格子のストリップライン法によるサブミリ波ESRを行いその磁性を明らかにしたいと考えている。
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