最近Fe/Cr系やCo/Cu系の金多層膜において巨大磁気抵抗の大きさがCr層やCu層の厚さtの関数として振動することが報告されている。本研究は、この事実を基にしてCo/Cu系多層膜に圧力をかけることによりtを連続的に変化させ、この系の伝導電子の散乱機構及び磁気的状態を明らかにし、巨大磁気抵抗効果の機構解明を目的として行った。 (Co10Å/Cu10Å)_<15>の試料について磁気抵抗効果DELTAR/R=(R(H)-R_0)の測定をP<20kbarの圧力範囲で行った。その結果T=4.2K、P=1barで磁気抵抗の大きさは約51%、飽和磁場H_Sは8.3kOeであることがわかった。この磁気抵抗の大きさは、P=20kbarで約6%圧力と共に減少する。この減少の割合は、Fe/Cr系化合物に比べ約1桁小さい。また、飽和磁場H_Sは圧力と共に減少しFe/Crて得られた結果と圧力係数の符号が反対であることがわかった。このFe/Cr系との違いが、非磁性層Cr及びCuの電子構造の違いなのか強磁性層Fe及びCoの違いなのか現在不明であるが、Co/Cu系人工格子の電子状態がFe/Cr系のそれに比べて安定であること及び磁性層間の相互作用の符号が、Fe/r系とCo/Cu系で反対であることが本研究により明らかになった。
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