本研究の目的は、AC電場を用いて中性粒子を種類を問わずトラップすることである。 理論面ではその安定性について我々は既にある程度解析を行っていたが、それらは安定度を定量的に評価するために、線形化した運動方程式を用いていた。AC電場を用いた中性粒子のトラップのポテンシャルは既ねRFイオントラップとのアナロジーが成り立つが、前者の場合、後者と異なり電極の形状を工夫しても非線形項を完全に取り除くことは原理的に不可能である。そこで非線形項の小さい電極形状を考察するとともに、非線形項も含めた完全な運動方程式を用いて安定性の解析を行った。非線形項を含めると解が本質的に不安定になることが密かに心配されたが、解析の結果定性的には線形化した場合と同様の結果を得た。ただし、非線形項を含めると解の安定領域はある程度狭くなる。 実験の法であるが、光磁気トラップ(MOT)から落ちてくるSr原子に下から^1S->^3Pの弱い遷移の光をあて、等速度でその下に置いたAC電場トラップの中にロードするというのが当初の計画であったが、ロードされる原子の絶対数が少ないこと(数10個/秒)と観測にも使っている弱い遷移が「弱い」(自然幅約 600Hz)こともありトラップを観測するには至っていない。今後ロードする原子数を増やすとともに、弱い遷移を観測する際の立体角を大きくする努力が必要と思われる。
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