大陸氷床は、それぞれ異なった、気候下におかれており、その表面でおこる涵養、消耗プロセスにも大きな違いがあると考えられる。気候変動に伴った氷床の応答を議論する際もこのよう特性を調べておくことが必要であろう。現在、入手できる光学センサーによる衛星データの中で、ほぼ全氷床の画像データが取得可能なのは、NOAA AVHRRである。本研究では、AVHRRデータを用いた同様の手法で、南極とグリーンランド氷床を比較した結果、以下のような知見を得た。 地形変化は、氷流の流出部で大きいことが、ハイパスフィルター処理の可視画像の微地形から読み取れる。地形の走行がグリーンランドの場合、等高度線に添った向き以外の地形も多く見られ、走行が等高度線に平行に並ぶ、南極しらせ氷河末端付近と異なった形となっており氷流の流動特性の違いが影響していると推測される。 堆積環境については、表面付近の雪粒子の粒径変化が、可視と近赤外の反射輝度の比によって区別できる。南極では、大規模な谷状地形に縞状パターンが現われ、雪尺データの変動と良い一致を示している。グリーンランド氷床においては、このスペクトル比は、かなり一様であり、地吹雪による再堆積過程が強くないことが予想される。 南極では、NOAA AVHRR画像で見られた縞状パターンがマイクロ波画像も現われ、数ピクセルの中で起こっている輝度温度変化は10度以上にも及ぶ。これは堆積過程の変化に伴う、表面から約1m程度の深さの中で起こっている粒径変化の分布を示していると考えられる。このような、数10kmスケールでの大きな輝度温度変化はグリーンランドでは見られず、数10kmスケールで起こっている堆積環境の不均一は、南極氷床に特有のプロセスであろうと考えられる。
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