研究概要 |
本研究は重要な温室効果気体であるメタンについて、その国内の大気濃度の変動を環境庁の一般大気環境測定局における観測結果のデータベースより抽出する研究を行った。そこから、国内の発生源強度の変動パターンと、世界的なバックグラウンド大気濃度の変動パターンを抽出した。 解析は、東京湾岸に位置する東京(新宿区)と川崎(川崎区)の国設大気局について試みた。1977年以来の結果の解析から、月平均値・中央値でみる限り、両局の濃度変動パターンとも、バックグラウンド大気観測局同様に、夏季に極小、冬季に極大を示した。ただし、8月に鋭い濃度低下が見られた。日内の濃度極小値は、季節にかかわらず午後2-4時頃に現れ,境界層の解消による大気の混合を示した。このため、午後2-4時の時間帯のデータを抽出すると、局所発生源の影響が最小となり、長期の大気濃度変化を解析するのに適当なデータが得られることがわかった。 つぎに,同時に記録されている風向・風速データより、両局の風向別の大気メタン濃度変動を解析した。その結果、両局とも南西の海洋性気団が吹き込むときに低濃度が出現し、その頻度が高い8月の濃度低下をもたらしていると考えられた。また、東京では南東、川崎では北東に相当する東京湾方向からの風の時に、高濃度が現れることが認めらた。この高濃度の出現は、夏季に著しく、冬季には顕著でない。この結果から、東京湾とその周辺に有為なメタンの発生源があり、夏季にその発生強度が大きいと推定された。この発生源が、周辺の埋立によるものか、水域に由来するかの研究を継続している。
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