電極表面の原子配列とその反応性との相関は興味を持たれる研究テーマである。単結晶電極は表面原子の配列を規制できるため、このテーマを詳細に研究するのに適している。 Pt電極上でCO_2の電解還元を試みると、CO_2はPt表面に吸着した水素によって還元され、Reduced CO_2(吸着CO)となる。Pt単結晶電極上で、この反応の動的過程を研究した例はまだない。Pt単結晶の基本指数面は吸着水素のエネルギーが大きく異なっており、吸着CO生成速度に顕著な面方位依存性が観測される可能性が高い。 今年度、本研究代表者は0.5M硫酸溶液中でPt(111)、Pt(110)面上の吸着CO生成速度を電流-電位曲線を解析することによって調べた。その結果、Pt(110)面上のCO生成初期速度はPt(111)面の約10倍大きいことが明らかになった。Pt(111)面は(111)テラスのみで構成されている。これに対し、Pt(110)面は3原子列の(111)テラスと2原子列の(111)ステップから成っている(1×2構造)。両者の違いはステップの有無だけであるから、ステップの存在が吸着水素によるCO_2還元活性に重要な役割を果たしていることが分かった。 0.05-0.02 V(vs.SHE)の範囲で電位を変えて吸着COの最大被覆率を測定した。Pt(110)面の場合、どの電位でもCOは大部分bridge型の吸着形態で電極表面全体を覆っていることが分かった。0.20Vの吸着水素被覆率初期値は0.05Vの1/5しかない。それにもかかわらず吸着COの最大被覆率に電位依存性が観測されないことから、Pt(110)面では消費された吸着水素が再生しCO_2を次々に還元していると考えられる。Pt(111)面ではこのような吸着水素の再生は観測されず、二つの面では吸着のCOの生成機構も異なることが分かった。 以上の結果は「電気化学協会1993年秋季大会(1C27)」で既に発表し、"Electrochimica Acta"に投稿予定である。
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