研究概要 |
トリメチレンメタンは、C4反応活性種として理論的、実験的に盛んに研究がなされている。特に、有機合成においては、C4ユニットを一度に導入できるため、中員環合成が多数報告されている。私共は、これまでに、これらの硫黄類似体であるbeta-チオアリルの鉄、ルテニウム錯体の合成とその構造について研究を行ってきた。今回、これまでbeta-チオアリル生成の前駆体として用いていたアレンエピスルフィドに更にエキソメチレンを導入したブタトリエン-2-エピスルフィド(1)を用いこれまで合成単離例のないチイレン錯体の合成を目指して、1と金属カルボニルとの反応を検討した。目的としたチイレン錯体は、得られなかったもののbeta-チオアリル錯体生成の前駆体と考えられるメタラチエタンのカルボニル挿入生成物(2)を安定に単離することに成功した。また、2はその熱反応において、比較的効率良く金属が脱離し1,2-チエタノンを生成することもわかった。この他、アリル置換アレンエピスルフィドの酸化反応により含硫黄中員環であるビシクロ[1.2.2]チアヘキサンS-オキシド誘導体を効率良く合成することにも成功している。
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