研究概要 |
1.Beckmann転位反応はオキシムからのアミド、ラクタムの合成に用いられており、工業的にも6-ナイロンの原料であるepsilon-カプロラクタムの合成に利用されている。この反応は通常、オキシムに対し、過剰量の硫酸を作用させるため、反応停止の際に中和操作により、大量の硫酸アンモニウムが副生する等の問題があり、触媒的手法の開発が強く望まれている。我々は平成5年度奨励研究(A)において、触媒的Beckmann転位反応の開発を試み、オキシムに対し、ニトロメタン還流下、触媒量の過レニウム酸テトラブチルアンモニウム(Bu_4NReO_4)とトリフルオロメタンスルホン酸(CF_3SO_3H)および塩酸ヒドロキシルアミンを作用させることにより、アミドが良好な収率で生成することを見い出した。また、芳香族および脂肪族ケトンオキシムのいずれを基質とした場合にも、対応するアミドが高収率で得られ、本反応が広い一般性を有することを明らかにした。さらに、ケトンと塩酸ヒドロキシルアミンを出発物質として、上記と同様な条件下で反応を行うことにより、ケトンから1段階で触媒的にアミドを合成できることを見い出した。 2.次に、分子内に芳香環を有するオキシムの、窒素原子と芳香環との分子内環化反応の開発を試みた。すなわち電子豊富な芳香環を有するベンジルアセトンオキシム誘導体を反応基質に用い、Beckmann転位反応に優先して、分子内環化反応を進行させる反応条件を探索した。その結果、オキシムに対し、モレキュラーシ-ブ5A存在下、1,2-ジクロロエタン還流中、Bu_4NReO_4とCF_3SO_3Hを作用させると、アミドの生成を伴うことなく、キノリン誘導体が生成することを見い出した。従来、このような形式の反応は報告例がなく、学術的に大変興味深い。また、キノリン骨格の合成法として全く新しいものである。
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