研究概要 |
最近、含リン複素環化合物は生理活性あるいは物性の面において注目されつつある。そこで、私は含リン複素環の新規構築法として、1,3-双極子部分にリンが含まれる反応活性分子を設計し、親双極子剤との付加環化反応というルートについて検討した。 まず、カルベノイドとP-S二重結合を有する化合物との反応による含リン1,3-双極子生成について検討を行った。カルベノイドは、ジアゾ化合物の酢酸ロジウム(II)触媒分解により生成することが知られている。そこで、トリフェニルホスフィンスルフィド存在下でカルベノイドを発生させ、アセチレンジカルボン酸ジメチル、N-フェニルマレイミド、シクロヘキセン等の親双極子剤で1,3-双極子のトラップを試みたが、成功しなかった。また、ジアゾ化合物をジアゾマロン酸ジエチル、ジアゾアセト酢酸エチル、ジアゾ酢酸エチル、alpha-ジアゾアセトフェノン等に変えてみたが、複雑な混合物を与えるのみであった。P=S結合の硫黄原子の電子密度を上げ、より1,3-双極子を生成させやすいと考えられるトリス(2,6-ジメトキシ)ホスフィンスルフィド存在下での反応を行ったがうまくいかなかった。一方、1,3,2,4-ジチアジホスフェタン-2,4-ジスルフィドは加熱すると単量体を生成することが知られている。そこでジアゾ化合物の分解をこの単量体が存在する条件下で行った。その結果、1,2,3-チアジアゾールが得られた。この生成物は未分解のジアゾ化合物からの生成物であり、カルベノイドからのものではない。 今後、より反応性の高いカルベンからの1,3-双極子の生成について検討し、当初の目的を達成させる予定である。
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