研究概要 |
Anionic oxy-Cops転位反応による九員環形成には、基質として1,2-ジビニルシクロペンタノール誘導体の調製が必要となるが、モノテルペンのイソプロペニル基がそのまま転位反応に利用できることに着目し、(+)-1imonene(1__〜)を出発原料に選んだ。1__∧をオゾン酸化後、還元処理で環内二重結合を切断したケト-アルデヒドへ変換し、分子内アルドール反応で五員環を形成させて共役アルデヒド(2__〜)へと導き、Wittig反応でビニル基を導入してトリエンを得た。次に位置及び立体選択的に還内二重結合をbeta-エポキシドとし、リチウムアミドでオキシラン環を開いて目的の1,2-ジビニルシクロペンタノール誘導体(3__〜)へと変換した。転位反応後も不斉点を残す目的も兼ねたSharpless酸化により3__∧の五員環外二重結合をエポキシドで保護した。この化合物にanionic oxy-Cope転位反応をほどこすと、穏やかな条件で、速やかに高収率で反応が進行し(ジメトキシエタン中,カリウムヘキサメチルジシラジド,40℃,15分,収率89%)、光学活性な九員環化合物が得られた。次に得られた九員環ケトンのalpha位に8炭素ユニットの導入を目的として種々の条件下で九員環エノラートと求核置換反応を試みたが、いずれの場合もカップリング生成物は得られなかった。そこであらかじめ将来側鎖となる8炭素ユニットを導入した1,2-ジビニルシクロペンタノール誘導体を調整した後、oxy-Cope転位を行って一挙に側鎖を有した九員環化合物を合成する経路を試みた。化合物3__〜にBarbier反応で側鎖部分を導入し、酸化、Wittig反応、オキシラン環の開列により目的の転位反応基質(4__〜)を得た。4__∧はanionic oxy-Cope転位反応により、対応する九員環化合物を与えた。現在、転位反応の収率向上を目的として最的条件の検討を行っている。
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