研究概要 |
低温の層状物質の劈開面に鎖状有機化合物蒸着すると、炭素骨格平面を下地に平行にして配向した単分子層を形成できるが、本研究では、ここに二次元的にな化学反応を起こして、交差鎖から成る織物状ポリマーの単一層(atmic cloth)を得ることをめざした。これは厚さ4A^^・の擬似的な有機単原子層である。 1.超高真空蒸着が可能な蒸気圧、平らに並んだ単分子層の形成能、単分子層における重合基の配置と反応性など、成膜分子に課せられる諸条件を検討した結果、1,15,17,31-dotriacontatetrayne(DTTY)が本研究の目的に最適であるとの結論に達し、その合成と精製を行った。 2.DTTY単電子層における分子の集合状態と電子状態および光重合の過程をペニングイオン化電子スペクトル(PIES)により検討した。213Kに保持したグラフアイトの劈開面にDTTYを1MLE(monolayer equivalence)蒸着すると、PIESにおいて下地のバンドが消える一方、DTTYのアルキル鎖のpseudo-pi軌道およびジアセチレンとアセチレンのpi軌道に基づくバンドが選択的に検出された。このことより、鎖を下地に横たえて並んた単分子層の形成を確認できた。超高真空槽サファイア窓を通してこの単分子層に紫外線を20h照射したところ、DTTYモノマーのpiバンドが消失し、ポリマーのpi電子系によるなだらかな構造が現れたが、アルキルバンドの形状は変わらなかった。また、この膜は室温にしても基板の寄与のないPIESを与え、モノマー膜の場合のような昇華性を示さなかった。以上の結果から、横たわったDTTY分子はアルキル鎖を横たえたまま重合し、アルキル鎖の並びを交互に等間隔で交差するポリジアセチレン鎖とポリアセチレン鎖で架橋したatmic clothが得られたと考えられる。
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