M_nF_2超微粒子の磁気秩序(反強磁性)の粒子サイズ効果を比熱の測定を通して定量的に研究するため、断熱比熱計の高感度、高信頼化を行った。これを実現するためには、加熱による試料の温度上昇を正確に測定する必要があり、信号線の接触部で発生する電気ノイズを軽減することを行った。電気ノイズ軽減には、超低熱起電力型スキャナースイッチを用いた。この改良により、従来ノイズにかくされていた超微粒子の磁気秩序に起因するスピン比熱が定量的に検出できるようになった。M_nF_2バルク試料は、70Kで反強磁性転移を示し、その磁気比熱にlambda型の鋭いカプスを有する。磁気秩序のサイズ効果を調べるために粒子径5nm程度のM_nF_2微粒子を0.5g程度ガス中蒸発法により作成し、磁気転移温度付近の比熱を定量的に測定した。定量的な解析は現在検討中であるが、lambda型の鋭いカプスがゆるやかな型になることを検出している。このような現象はスピンのゆらぎの効果によるものと思われるが、これを実証するためには、より小さな粒子径を有する試料を用いた系統的な実験が必要である。ガス中蒸発法では、5nmより小さな粒子径を有するM_nF_2超微粒子を作成することはむずかしい。そこで多層膜化した真空島状蒸着法により、マイラ基板上にSiO_2/M_nF_2/SiO_2積層超微粒子試料を作成し、実験を継続中である。この方法では、粒子径5nm以下の粒子が作成できより詳細な情報が得られるものと思われる。
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