本年度は非イオン性界面活性剤ミセルを用いる電気泳動法の研究を行った。キャピラリー電気泳動においてイオン性界面活性剤活性剤を添加することによるミセル動電クロマトグラフィーが既に報告されているが、より分子量の大きい生体物質を分離するためには相互作用がミセル動電クロマトグラフィーで用いられるイオン性界面活性剤活性剤より相互作用の小さいミセルについて検討する必要があった。非イオン性界面活性剤ミセルの有効性はモチリンペプチドの分離において顕著に認められた。ドデシンベルゼンスルホン酸ナトリウムあるいは臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムなどのイオン性界面活性剤を用いた場合界面活性剤とミセルとの相互作用が強すぎるためこれらの物質はミセルに取り込まれてしまい分離が困難であるが、Tween20のような非イオン性界面活性剤を用いることにより分離することができた。非イオン性界面活性剤を用いるこの方法によると電荷の違いによってのみ分離する従来の電気泳動法では困難であった類似ペプチドの分離が可能になった。ペプチドの一種である、II種のアンジオテンシンII誘導体について分離を試み120mMのTWEENを添加することによりこれらの分離が初めて可能になった。さらにこの系について分離の可能性を調べるため24種のダルシルアミノ酸誘導体を分離した。これらの物質をキャピラリー電気泳動で電荷の違いのみによって分離することは困難である。イオン性界面活性剤を添加するミセル動電クロマトグラフィーについても検討されているが、移動時間が接近しているため分離再現性の問題があった。分離条件の最適化の結果100mMのTween20を添加したpH2.4の緩衡溶液を用いて23種のダンシルアミノ酸を再現性よく分離することができた。
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