形質転換型ラン藻SynechococcusPCC7942において無機炭素固定に必須な遺伝子icfAを、炭酸固定酸素Rubisco遺伝子の下流20kbの位置に見いだしている。この遺伝子に押入変異を導入すると、通常の空気レベルのCO_2濃度では細胞の生育が停止し、5%のCO_2を通気すると生育が回復した。この新しい遺伝子icfAの機能を生化学的、分子生物学的に明らかにするために、以下の実験を行った。 icfA遺伝子産物の推定アミノ酸配列は、高等植物の葉緑体に存在する炭酸脱水酸素と有意な相同性を示すことから、この遺伝子産物はラン藻における炭酸脱水酸素であると予測された。そこで、この遺伝子を大腸菌発現ベクターにクローン化し大腸菌体内で発現させて、炭酸脱水酵素活性が検出されるかどうかを調べた。発現量が少なかったため、有為な活性は認められなかった。また、icfA遺伝子を大腸菌で発現させ、その産物に対する特異抗体を作成する予定であったが、同じく発現量が少なかったため、タンパク質の精製には至っていない。現時点ではラン藻の炭酸脱水酵素は、Rubiscoと共にカルボキシゾームに局在していると考えられているが、その実証にはカルボキシゾームを単離することが必要である。
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