研究概要 |
藻類は、多種多様な形態の葉緑体を持つのみならず、その遺伝子発現の場である葉緑体核様体の形状も、微小な核様体が葉緑体全体に分散するものやピレノイドが核様体であるものなど著しい多様性を示す。しかしながら、藻類の葉緑体核様体の高次構造については未知の点が多い。我々は、藻類の葉緑体核様体の高次構造を明かにするためにフサイワヅタから葉緑体核様体を単離し、その性質について調べた。フサイワヅタは、葉緑体核様体がピレノイドに局在し、ピレノイドと複合体を形成している特異的な性質を持っている。これまで、フサイワヅタについては、ピレノイド核様体複合体が主としてリブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco)の大小のサブユニットと44KDaと63KDaのタンパク質から構成されていることが分かった。しかし、ピレノイド核様体複合体はこれまでの単離条件ではきわめて不安定であり、単離過程でいくつかのタンパク質が失われた可能性がある。そこで、ピレノイドを安定化することが知られているHgCl_2処理を行ったあとでピレノイド核様体複合体の単離を行った。その結果、ピレノイド核様体複合体は安定化されて単離され、単離ピレノイド核様体複合体のピレノイド基質全体にDNAとRubiscoが分布しているのかDNA特異的蛍光色素DAPI染色法と抗Rubisco抗体を用いた蛍光抗体法によって確かめられた。このピレノイド核様体複合体はSDS-PAGEの結果、主要タンパク質のほかに少なくとも約23種の微量タンパク質によって構成されていることが明かとなった。今年度は、関東地方の海水の水温が低いためか、フサイワヅタなどの生育が悪く、これ以上の実験を進めることができなかった。
|