研究概要 |
ホルモンによる卵成熟キナーゼカスケード活性化機構の解明を目指し、その構成分子の分子生物学的単離、同定を試み、以下の成果を得た。 キンギョ未成熟卵を卵成熟誘起ホルモン:17alpha,20beta-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン存在下で培養し、経時的に回収した卵細胞質よりcdk2キナーゼを免疫沈降してヒストンH1キナーゼ活性を測定したところ、cdk2活性は減数第一分裂中期頃より上昇し始め、減数第二分裂中期に最高値に達したが活性はcdc2キナーゼの1/10程度であった。一方cdc2とは異なり、間期と成熟卵賦活後における不活性化は見られなかった。また、卵成熟過程においてcdk2タンパク質ならびにmRNA量に顕著な変動は見られなかった。 キンギョ成熟卵cDNAライブラリーよりプロテインキナーゼの共通領域をコードする合成オリゴヌクレオチドをプローブとしてスクリーニングを行い、4種6個のクローンを単離し、塩基配列を決定した(以下GFKINと呼ぶ)。推定されるアミノ酸配列に対する相同配列をデータベースで検索したところ、既知のものはなかったが体細胞分裂関連キナーゼのいくつかと低い相同性が見出された。特にGFKIN5と12は出芽酵母S.cerevisiaeのKIN3キナーゼおよびA.nidulansのNIMAキナーゼに、またGFKIN7と9はMAPキナーゼファミリーにそれぞれ30〜40%の相同性を持っていた。また、ノーザンブロット分析で当該遺伝子の発現が生殖腺でのみ検出されたことからこれらのキナーゼが卵成熟過程に何らかの機能を果たしているものと推測された。これらのcDNAに対する大腸菌組換えタンパク質を作製し、マウスに免疫したがcDNA産物を認識する抗体は今のところ得られておらず、現在複数の異なるタンパク質発現系を用いて再試行している。
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