半導体デバイスの超集積化が進む中、最終的な微細加工サイズである原子レベルでの結晶成長制御技術や微細加工技術の開発が急務となっている。本研究は結晶成長の原子層精度の成長制御とその場での成長膜評価が可能な真空紫外光電子分光(UPS)強度振動法を開発し、その振動の起源を解明した。さらにUPS強度振動法が表面電子状態の解析法としても有力な手段になることを示した。以下に具体的な結果を記す。 Si(100)表面に対しSi分子線エピタキシ成長の最中にUPS測定を行うと、表面準位に起因する光電子強度が周期的に変化する。この理由として次の3つが考えられる。(1)表面荒さの周期的変化(2)表面水素量の周期的変化(3)Si(100)表面に特有な2つの表面再配列の周期的入れ替わり(2x1⇔1x2)。(2)を検証するため表面水素が存在しない個体Siを成長ソースに用い測定を行った。その結果成長中に明白な振動を観測した。したがって(2)は否定されることがわかった。さらに成長を始める前の表面が2x1と1x2の場合では成長中の振動の位相が完全に180度反転することを見いだした。これにより振動の起源は(3)であることがわかった。 UPS強度が成長速度に応じて周期的に振動するならば、その観測した準位が表面準位であることは明白である。逆に言えば振動準位を見つけることによって表面準位を同定することができる。そこでSi(100)において多くのエネルギー点でUPSの強度変化を測定した。その結果振動する準位がdangling-bond stateだけでなく結合エネルギー4eV付近にも存在することがわかった。表面準位の同定は通常のUPS法では間接的な方法しかなく、この表面準位は本研究によって初めて明らかにされたものである。UPS強度振動法は他の表面界面においても表面準位の観測や同定に今後威力を発揮すると期待される。
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