金属板材の引張試験と曲げ試験を行い、その結果を用いて、材料変形特性データベースと曲げデータベースを構築し、データベースを基とする曲げ加工AI制御システムの開発を行った。具体的に下記に示す。 1)曲げ加工データベースの構築 材質の異なる板材を用いて引張試験を行い、個々の材料の変形特性を調べた。また、曲げ実験を行い、板厚や材料特性のばらつきが成形精度に与える影響を調べた。板厚や材料特性、さらに曲げ実験でのモニタリングしたパンチ荷重-ストローク曲線を用いて、データベースの構築を行った。 2)データベースを基とする制御システムの開発 基礎実験データベースを基とする曲げ加工のオンライン制御システムを構築した。具体的には、加工中にパンチ荷重-ストローク曲線を測定し、データベース内の曲線との比較を行う。曲線同士のズレに対してファジィモデルを用いて評価し、最終加工条件の決定を行う。また、加工前に得られる情報(例えば、公称材質、公称板厚など)から、データベースの検索(オフライン検索)を行い、ある程度データを絞り込み、別のファイルに保存することによってより小さいデータベースを構成する。オンラインでは小さいデータベースの検索(オンライン検索)により、検索時間を短縮し、加工制御のリアルタイム性を可能にした。加工制御シミュレーションの結果から、かなり高精度な加工が実現し、特に、加工前に得られる情報が多い(例えば、製造メーカーまで分かる)場合、加工精度が±0.2%以内という大変高いものである。 また、本研究では、FEMシミュレーションを用いて材料変形特性の各要素(例えば、ヤング率、降伏応力、加工硬化指数など)の曲げ角度に及ぼす影響の度合を解析した。加工中に得られるパンチ荷重一ストローク曲線から材料特性を同定し、データベースとの比較から材料特性のズレを算出し、シミュレーションで得られた影響度を用いて最終加工条件に対する補正量を決定することによって、どんな材料に対しても安定した加工精度が得られることが分かった。
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