従来の構造格子による自動格子生成法では境界内部の格子を円滑に生成する作業のみを対象としており、物理空間と計算空間との対応や境界上の格子の設定は人間の手でおこなわれているのが現状である。これら手作業の部分にも膨大な労力が必要であり、格子生成は依然解析者の大きな負担となっている。そこで本研究ではこれらの自動化に関する研究をおこない以下の成果を得た。 (1)3次元形状の境界として曲面は頻繁に現われるが、曲面上の格子生成は従来の手法では扱えなかった。そこで従来の手法を微分幾何学に基づいて曲面上にも適用できるよう一般化した。また、これを用いてベジエ曲面や曲管表面上での格子生成をおこない、本手法の有効性を示した。なおこの研究は、平成4年度の奨励研究(A)課題番号04750134の成果と合わせて、平成5年8月に仙台で開催された第5回数値流体力学国際シンポジウムで発表した。 (2)物理空間と計算空間との対応付けの自動化手法を新たに開発した。これは格子トポロジーとして考えうるあらゆる組み合わせを計算機におこなわせ、得られた格子の評価をおこなうことで適切なものを自動的に選び出すシステムである。格子評価には、微分幾何量を用いて格子の均一性や直交性、アスペクト比を定量的に導き、これらを組み合わせた評価関数を用いた。 (3)さらに複雑な形状では、領域分割をおこなうのが一般的であるが、これに対しても新たに自動化手法を開発した。これは、仮格子を生成して境界に近い部分での歪みを評価し、あるしきい値を超えていれば元の形状より分離して新たな領域とするという方法である。この方法の利点は、仮格子が適切であればそのまま完成された格子となるので従来の格子生成法との整合性が良いこと、また、分割された領域にさらに同じ手順を繰り返すことができ再帰的な領域分割が可能になることである。
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