研究概要 |
弾性進行波を用いた移動機構として薄肉円環を利用したシステムを考案した. まず,薄肉円環モデルに基づき有限要素法を用いて基礎方程式を誘導し,理論的検討を行った.円環の円周上の2点を正弦加振することにより,弾性進行波を発生させることが可能であるかどうか調べた.いくつかの数値シミュレーションにより,加振振動数及びその加振点2点の位相差を操作することにより円環上を移動する弾性波を発生させることができることが分かった. 次に,実験装置を製作し実験的検討を行った.本年度は加振方法として,電磁石を用いて行うことにした.まず,パーソナルコンピュータの拡張スロットを利用したインターフェースボードの製作を行った.これは,アドレスコード部,データラッチ部及び所望の加振振動数を発生するためのパルス発生部からなる.パルス発生部は,10MHzの発振器とカウンタ/タイマインターフェース8253を主体として製作を行った.これによりソフトウェアを用いて加振振動数を任意に変化させることが可能なシステムを作ることができた.2組のパルスの位相差を任意に変化させる部分についてはハードウェアの製作が間に合わなかったので,ソフトウェアにより,パルスを発生させるタイミングを変えることにより位相差を発生させることにした.薄肉円環を自由支持の境界条件とするために糸で吊るし,2個の電磁石を用いた加振実験を行った.その結果,若干のうなりを含んだ弾性進行波を発生させることはできたが,安定した波を形成させるには至らなかった. 今後の課題としては加振振動数の位相差を任意に設定できる回路の製作と,発生した波のフィールドバックにより安定した進行波を形成し続けるための制御アルゴリズムを構築することである.
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