人間の遠隔操作で動く作業ロボットの高度化や知能化が進むにつれて、スレーブ側のロボットの把握動作などの仕事に応じて、操作側の人間の手に何らかの方法でロボットの作業感覚をフィードバックできる装置の必要性が指摘されている。本研究では、操作者の手に直接装着して、スレーブ側のロボットまたはコンピュータ内に構築された仮想世界からの情報に基づく力感覚を、流体(空気)の圧力を用いて抵抗力の形で操作者(マスター側)の手に伝え、臨場感のある操作支援を実現する力感覚呈示装置「流体グローブ」の開発と、この流体グローブを用いた仮想作業システムの実現を目的として、システムの試作と実験的検討を行う。 本年度は流体グローブ本体と計測制御システムの試作を行った。流体グローブは、二重構造の手袋内の関節部分に配置されたエチレンプロピレン製チューブ(内径10mm、肉厚0.65mm)に、比較的高応答の圧力比例制御弁で1気圧程度の圧縮空気を送り込み、チューブ内の空気の圧力を制御することによりチューブに剛性抵抗を生じさせる構造をとる。流体グローブの装着者は、このチューブの剛性抵抗の変化により、手の曲げに対する拘束を受け、あたかも物体を把握しているような臨場感を得ることができた。また計測制御システムでは、手袋の表面に設置した曲げ検出用のセンサからの情報を用いて、圧力比例制御弁によりチューブ内の空気圧を制御した。 以上の試作システムを使って、2種類の大きさの円筒容器を想定した仮想物体に対して、流体グローブを装着して操作者の力感覚の呈示の臨場感と再現性を実験的に確認した。
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