大規模・複雑化した電子系統には、時定数が分のオーダーの長周期な動的ダイナミクスが存在する。しかし、低応答な動的特性の中には、変圧器タップのように複雑な非線形性を含むものがあり、システム論的な手法を用いた統合的な解析を難しくしているのが現状である。例えば、変圧器タップの長周期な振動現象が従来より指摘されていたが、非線形性の強い振動現象であって解析が困難なため、これまでほとんど検討がなされていなかった。本研究では、特に変圧器タップの取り扱い方法の検討に重点を置き、以下に沿って研究を遂行した。 1.従来の研究では、様々な時定数の混在するシステムを効果的に取り扱う特異摂動理論を電子系統に応用するための検討を行ったが、本研究では、まず、この知見を基に変圧器タップ動作を解析するための電力系統の低応答近似システム(解析用モデル)を構築した。そして、これを用いて変圧器タップの逆動作条件を検討した。また、低応答ダイナミクスが関与して、タップ切替変圧器のある重負荷な負荷点において、静的分岐(電圧崩壊)に至るメカニズムを検討した。 2.上記の近似モデルを用いて、変圧器タップの振動現象に対して一連の安定性の条件を導出した。また、これらの条件は、複数のタップの相互干渉による持続振動と、平衡状態に達するまでに好ましくない動きを伴う過渡的振動に分類できることを示した。 3.多数の変圧器タップを含む系統でシミュレーションを行い、本現象の特徴抽出を行うとともに、その回避制御方式に関する基礎的データを収集した。
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