近年、超伝導技術の電力分野への適用が試みられるようになり、中でも超伝導マグネットを用いたエネルギー貯蔵システム(SMES)は、系統のロードレベリングなどに有効であることから注目されている。SMESに使用されるような大型超伝導マグネットでは、エネルギーの充・放電やクエンチ発生に伴い、数〜数十kVの内部電圧が発生する。巻線間での絶縁破壊と短絡は最終的にアーク放電に移行し、貯蔵エネルギーの大部分がここで消費され、マグネットは修復不能な損傷を被ることとなる。したがって、クエンチ時のマグネット保護の観点から、アーク放電発生時のマグネットの挙動を調べることが必要である。本研究では、低温条件下で作動可能なオープニングスイッチと超伝導マグネットを用いた巻線短絡の模擬実験を行い、特にアーク放電消弧に伴うマグネット内部電圧特性について検討した。以下に得られた主な結果を記す。 1.機械式オープニングスイッチを用いた超伝導マグネットからのエネルギー転送過程において、スイッチの開放時にアーク放電が発生することを確認した。 2.スイッチ間のアーク放電の消弧に伴い、マグネット端子間には振動性の異常電圧が発生する。この振動電圧発生メカニズムの定量的な解析を行った結果、その特性はアーク消弧直前におけるアーク電流と抵抗の変化特性および外部回路のインピーダンスに強く依存することが明らかになった。 3.上記の結果に基づき、振動電圧の抑制法として負荷にキャパシタンスを並行接続する方法を提案し、その有効性を実験により確認した。
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