本研究の最終目的は、デジタルシグナルプロセッサ(以下、DSP)を用いて、フライホイール付き誘導機の電力制御、コンバータ制御、インバータ制御を行い、DSPを用いた全デジタル制御方式によるフライホイール式無停電電源装置を開発することである。本年度の開発計画は、電源異常時のエネルギー源となるフライホイール付き誘導電動発電機のエネルギー制御をDSP制御による三相インバータにより実現することである。 DSPによるエネルギー制御を行うにあたり、DC電圧と誘導機の回転数をDSP内に取り込む必要があり、高速A/D変換インターフェースボードおよび制御ソフトウエアを設計開発した。高速A/D変換インターフェースボードは変換時間3muSのA/D変換器を用い、また回転数取り込みには全デジタル周波数逓倍回路を設計し、各々12bitの高速高精度入力を可能にした。制御ソフトウエアは、16kHzの割込信号の度に各データをDSP内に取込み、すべり周波数制御処理を施し、次の割込信号までの間に電力制御用三相インバータへの出力も含めて処理を完了する。また、電源異常時は瞬時にエネルギー回生処理を行えるよう強制割込モードを使用し、同時に復電を検出判断する二重の電源異常監視機能を装備した。 以上の開発により、フライホイール付き誘導機へのエネルギー貯蔵は極めて滑らかな貯蔵過程をたどり、約12分でエネルギー貯蔵を完了することができた。また、電源異常時のエネルギー回生制御においても瞬時にエネルギーの回生制御が行われ、良好な結果が得られることを確認できた。このことから、本年度の研究開発計画は計画通り完了した。 今後の計画としては、コンバータおよびインバータもDSPによる制御方式とし、全デジタル制御方式によるフライホイール式UPSの開発を行う予定である。
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