研究概要 |
一般にダイヤモンドの成膜において基板に単結晶Siを用いた場合は、表面傷付けを行うことによりダイヤモンドの核発生密度を増加させている。しかし、表面傷付けは再現性の面で問題があり、電子デバイスにも不利である。本研究は我々が独自に開発したヘリカルアンテナ励起ECRプラズマCVD装置を用い、基板には基板洗浄のみで表面傷付けを一切行っていない鏡面Siウェーハを用いてダイヤモンド成膜を試みた。初期排気5.0×10^<-6>Torr、基板温度600℃,ガス圧力0.01Torr,投入電力98Wとして、水素希釈メタン濃度及びDCバイアスを変化させて行った。水素希釈度に対する膜質の差は特に認められず、ラマン分光及びX線回析の結果から堆積物はグラッシーカーボンであった。次に水素希釈メタン濃度を0.2%一定とし、基板へ印加するDCバイアスに対する変化を調べた。DCバイアス+30Vでダイヤモンドの(220)面及び(311)面と考えられるX線回析ピークが観測された。またこの試料についてSEMによる表面観察を行い、ボール状及び立方晶のダイヤモンドと思われる粒子が観測された。さらにこの粒子の成分が炭素であることをEDXで確認した。これは正バイアスを基板へ印加したことにより基板への電子衝撃が増加し、基板表面での水素ガスの解離が促進され、ダイヤモンドが生成したと考えられる。しかし、ECRプラズマでの発散磁界によって加速されたイオンによる衝撃の効果も無視できない。このことをさらに詳しく検討するために、今後は水素ラジカルと共に電子・イオン量及びエネルギーの制御をして成膜を行うことを計画している。
|