研究概要 |
本研究は,高密度ディジタル磁気記録に適した信号処理方式として,パ-シャルレスポンス(PR)方式と最尤復号法の一つであるViterbi復号法を組み合わせたPRML方式の検討を行ったものである.但し,従来のPR方式の検討では,記録ヘッドから等化器出力までの伝達特性が所望のPR特性となるように等化器の伝達特性を定めていたが,本研究では,記録波形のDCフリー化のために記録側に記録等化器を挿入し,記録等化器入力から再生等化器出力までの伝達特性をPR方式と見なして,ワークステーションを用いた計算機シミュレーションにより誤り率特性を求め,比較検討を行った. 1.高SN比を得ることのできるPR方式を見いだす. 高密度記録においては,高域抑圧型のPR方式が優れた特性を示し,ビット間隔T_bの遅延演算子をDとしたとき,1+D,(1+D)^2,(1+D)^2(1-D),(1+D)(1-D^3)の伝達特性を持つPR方式が良好な特性となることが明らかとなった. 2.Viterbi復号(ML)による改善が大きなPR方式を求める. 再生時のレベル変動の影響などを考慮し,識別点の信号レベル数を5以下として検討したところ,PR(1,1,-1,-1),PR(1,0,-1,1,0,-1),PR(1,-1,-1,1),PR(1,0,-2,0,-1),PR(1,0,-1,-1,0,1)PR(1,0,0,-2,0,0,1)方式などが約6dBの改善が可能なPR方式であることが明らかとなった. 3.2.で優れた特性を有すことが明らかとなったPR方式を,1.のPR特性を持つ再生等化器と記録側に挿入する記録等化器によって実現する. DCフリーで,かつ2値の記録波形を得ることができる(1-D^<l->1/2)/(1+D1/2)(l=1,2,3,…)の伝達特性を持つ記録等化器を1.のPR方式と組み合わせて2.のPR方式を実現した.その結果,PR(1,0,-1,-1,0,1),PR(1,0,-2,0,-1),PR(1,1,-1,-1),PR(1,-1,-1,1)が良好な特性を示すPRML方式であることが明らかとなった.また,Viterbi復号による改善は約3dBと小さいものの,PR(1,0,-1)方式も良好な特性を示すことが明らかとなった. 上記のように,計算機シミュレーションを行うことによって,高密度記録に適した方式を明らかにした.今後は,実際の記録再生系を用いた解析を行う予定である.
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