一般のアナログ公衆電話回線により伝送された音声信号を感音性難聴者が受聴する場合に使用される補聴装置は、品質が劣化した音声から難聴者の個人の聴覚特性に適合する振幅圧縮、周波数圧縮等の処理を施しその出力を生成する必要があるが、電話により通話では周囲雑音をはじめ信号伝送系での雑音の混入が考えられる。一方実用的な補聴装置は、その安定な動作がこれらの雑音により阻害されないように、補聴効果が低下せず、また聴覚に対し聞き取り易い補聴出力を提供できる補聴方式が必要となる。本研究では、このような実用性の高い電話用補聴装置での周囲雑音が補聴効果に及ぼす影響を明らかにするために検討をする事を目的として行われた。 雑音の影響を受けにくい電話音声用の補聴方式を検証するための模擬雑音を生成するため、次のような方法で、信号処理を行うシステムを構成した。まず、ハードウェアで雑音源を製作しその信号出力をDSPによるリアルタイム演算部に送り、必要とされる模擬雑音の周波数特性やレベルを変化させるソフトウェア処理を加える。次に、処理によって得た信号をDATレコーダに記録し、更にDATインターフェースを通して信号をパソコンに送りノイズ形状等生成した模擬雑音の評価を行った。その結果概ね目的としたスペクトル形状が実現されているのが確かめられた。次にこれらの雑音信号を予め準備された振幅圧縮音声と重畳するための、ミキシング部を構成し、基本的な聞き取り試験をおこなった。その結果実験システム全体は、実験のための条件を満たしていることが確認できた。 今後ノイズの加工処理に使用するDSPプログラムの内容を改善し、種々の周囲環境雑音の影響を定量的に検証できるようにし、補聴方式の評価を行う予定である。
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