本研究では、軸回転数の大きな変化に対しても、制御性能をロバストに保持する磁気軸受制御系の設計を行なった。特に、H∞制御を発展させたmu-解析・設計法を用いることにより、ロバスト制御性能を達成する制御系を構成した。そして、多変数制御系である磁気軸受に対してmu-解析・設計法の有効性を実験的に検証した。 本研究実績の概要は次のようにまとめられる。 1.対象とする磁気軸受において、回転子軸を剛体と仮定し、その数式モデルを導出した。このとき、各軸間の運動の相互干渉を明確にモデル化し多変数系として取り扱った。特に、軸の鉛直方向運動と水平方向運動の間の干渉を考慮し、これにより磁気軸受における数式モデルの不確かさ記述した。 2.得られた数式モデルに基づき、制御系設計のための問題設定を行なった。ここでは系の制御性能として望ましい外乱抑制特性に着目し、感度関数の低減化をはかった。不確かさを考慮して記述されたモデルの集合すべてに対して、系の安定性を保持するとともに、低感度特性を達成するコントローラを求めた。 3.設定された制御目的を満足するように磁気軸受制御系の設計を行なった。特に、ジャイロ効果の影響に対しても系の制御性能が頑強に保持されるようにmu-解析・設計法に基づいてコントローラを構成した。 4.計算されたコントローラを実現するための実時間制御用ソフトウェアを開発した。さらに磁気軸受に対してディジタル制御装置を実施し、十分な制御実験を繰り返した。最後に、得られた実験結果を計測器を用いて測定・解析し、これに関する検討を行なった。
|