水路実験では水路に流す水の流速、流砂量、流砂径を種々に変えて水路内で20cm離れた2箇所で超音波断層映像の測定を行なった。2箇所の超音波断層映像はビデオに同時録画し、オフラインで輝度を256段階に離散化して計算機に取り込み、動画像データとした。 推定に影響するゴ-スト像の内、時間的に変化しない静的あるいは緩やかに変化する準静的な雑音像の除去を非対称差分法により実現した。本データ表現では基準画像を定期的に変更することで、時間的な測定条件、環境の変化を自動的に補正出来る。 流砂粒径の測定では処理の高速化のため画像データを底面方向および側面方向に写像し、1次元データとして処理した。この場合、写像により物体の重なりが生じるが、お互いに直角方向に写像した2つのデータを用いて対処できる。 1次元データはフーリエ変換を施し、空間周波数上のデータに変換する。画像データに石が存在する場合、石の大きさに応じた空間周波数近傍にパワースペクトルが集中ため石の大きさが推定出来る。2つの観測点で作成した空間周波数領域の時系列データの相互相関を解析することにより流れる石の各々の大きさと流速を推定した。水路実験のデータを解析した結果、直径が7mm程度の小さな粒径の流砂については粒径が良好に推定でき、移動速度が推定できることを示した。さらに、観測洩れが起こった場合に、速度推定は不可能であるが同時計測が石の検出に有効であることを示した。しかし、フーリエ法は低周波分解能が低いため、データ数に比較して流砂径が大きい場合については正確な粒径が推定できないことが明らかとなった。このため、同時に複数の解像度で流砂の粒径を推定し、かつ位置の推定も行なえるWavelet法による粒径推定の方法を新たに開発し、比較的大きな粒径の推定に対する有効性を示した。
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