研究概要 |
宇宙構造物や原子力プラントなど,大規模・複雑な制御対象を高性能かつ高制御性能に制御する必要が生じてきた。そのような場合,単に数多くのコントローラが必要なだけでなく,各コントローラが他と協力するという協調関係の実現がきわめて重要である.本研究ではこのような協調制御の概念を体系化することをめざした。 本研究では複数のコントローラ間の協調関係をつぎの3点に集約した。 (a)高信頼性:制御系としてのコントローラに対する耐故障性 (b)高制御性能:複数のコントローラ全体としての特性により実現される制御系としての性能 (c)コントローラ間の負荷分担 (c)に関してはまったく新しい概念を導入した。制御系への指令信号(目標値信号など)に対する各コントローラの出力信号のエネルギーを“load"とする。すべてのコントローラについて単独で稼働するよりも他とともに稼働する方がどのような指令信号に対しても必ず“load"が軽減される場合、“load-sharingが実現されているとした.その場合、各コントローラは他とともに稼働することでエネルギー面から楽をしていることになる. 本研究ではこれら3つの要求を同時に達成する制御系の構造と設計法を与えた。それにより、複数のコントローラ間の協調という概念を制御の面からより明確にすることができた。 本科学研究費補助金により購入したワークステーションを用いることでエネルギーに関する膨大なデータを扱った数値実験が可能となり、本研究成果の有効性を確認することができた。今後はネットワーク通信の要素を取り入れたより現実的な実験をすすめる計画である。 なお、本研究成果は協調制御としての観点に的を絞った形で“Reliable Load-Sharing Control"と題して国際会議The 33rd IEEEConference on Decision and Controlに投稿中であることを付記しておく。
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