本研究では、建て替えを控えている一精神病院デイケア部門で、職員と患者が自らのデイケア施設の計画に対して空間的要求を発言する機会を設けることによって、施設空間のイメージ、認知度、要求や問題点などを明らかにし、施設の今後のあり方を考察した。 具体的にはまず、病院敷地内におけるデイケア棟など建物配置と、デイケア棟内の平面図、諸室構成に関して、患者、職員による現在の施設のイメージマップを作成してもらった。その作成過程、作画完成度、室機能の把握状況、空間要素、職員と患者の違い、自分の気に入った場所などを分析した。この結果、患者の多くは、静かな場所、逃げ込める場所への愛着が高いことが分かった。また、患者の空間認知の特性として、諸室を連続したものではなく分離したものとして把握しているグループの存在などが抽出された。 次に、職員と患者が望むデイケア施設を自ら構成してもらう方法として、あらかじめ作成した室単位の部品を平面図に配置するレイアウトゲームと呼ばれるデザインゲームをおこなった。これにより、患者の求める施設空間としては、静寂さを求める傾向やそのための諸室グル-ピング、現状の施設を追随する傾向などが多く見られた。 さらに、調査に先立ち、デイケア施設における一日の患者と職員の生活行動の実状を観察し把握した。また、考察を深めるために、先進的デイケア施設に訪問ヒアリングし、プログラムや理念と施設空間への対応方法についての実情を捉えた。
|