金属/絶縁体/金属積層膜において絶縁体の膜厚が数nm〜数十nmの超薄膜の場合、上下金属膜間に数Vの電圧を印加すると金属の絶縁体膜中への電界蒸発が起こる。この現象を電気抵抗変化によって確認し、その実態を断面電顕観察を行った。 si(100)を基板とし、rfスパッタ装置において異なる大きなマスクを用いてCo、Mg0(7〜40nm)、そして上部金属(直径3mm)としてCo、M、Auをそれぞれ成膜した。配線接続にはInGa液体合金を用いた。 初期抵抗測定は±0.1Vの電圧印加にて行なった。Auの場合は始めから導通状態(〜0.5OMEGA)であり、Co、Wの場合は数十kOMEGA〜数百OMEGAの範囲に分布した。これらの積層膜にパルス状、ランプ状の電圧を印加すると1V程度のしきい値以上で電気抵抗は0.5OMEGA程度まで不可逆に低下した。 この初期抵抗のばらつきの原因を調べるためにX線回析によりMgO層部分だけからの回析強度を分離したところ電圧印加前に既に下層CoがMgO膜中に存在することが分かった。これは断面高分解能電顕観察によっても裏付けられた。また電圧印加後の断面高分解能電顕観察では上層WがMgO膜中に存在することが確認され、明視野像中には上下金属間をつなぐ黒いコントラスト(量子細線)も確認された。 本研究により金属/絶縁体/金属積層膜においては成膜時に既に金属元素がMgO膜中に混入(拡散)し、その程度は元素に依存すること、また電界印加によって上部金属はさらにMgO膜中に侵入し量子細線の形態をとることが明らかとなった。
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