ZrO_2固溶体における立方-正方相転移にとって軸率c_F/a_Fよりもむしろ酸素の位置が重要である.本研究は酸素の散乱能が比較的大きな中性子線の回折とラマン散乱によりZrO_2-YO_<1.5>およびZrO_2-CeO_2固溶体における酸素変位を研究することを目的としている。 ZrO_2-YO_<1.5>系ではXRD測定により、組成X=10と12ではt′-ZrO_2のみ、X≧16でt″-ZrO_2またはc-ZrO_2のみ、X=14ではt′と(t″またはc)が共存した.酸素イオンが蛍石型構造の正規のサイトから変位するために生じる、蛍石型構造の112_F禁制反射(正方格子の102反射と等価)の積分強度はYO_<1.5>濃度の増加と共に減少した。X≦16の組成域では102反射が明確に観測されたが、X=18の試料では102反射が明確には検出されえなかった。酸素イオンのc軸方向の原子座標はYO_<1.5>濃度が増加すると共に大きくなった.即ち酸素イオンの変位量c(1/4-z)は減少した.また、ラマン散乱において立方相のスペクトルに対して特徴的な正方相のバンドはイットリアの濃度の増加と共に減少し、このバンドが消失する組成から立方-正方相境界を見積ることが出来ることを見いだした。ZrO_2-CeO_2系ではZrO_2-YO_<1.5>系と同様、酸素の原子座標がCeO_2の濃度と共に増加した。即ち、酸素の変位は小さくなった。XRDの結果ではCeO_2濃度が70モル%以上の組成域で軸率c/aが1に等しくなっている。従って、70-90モル%の組成域ではt″となっていると考えられる。また、CeO_2濃度が増加するにつれて101反射の半価幅はほとんど変化しないが、102反射の半価幅は増加した。これはドメインの大きさが減少することに起因すると考察された。高温でのラマン散乱により80モルの試料では400℃より高温で立方相に転移すると推定された。
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