数種の水溶性有機高分子あるいは極性の高い溶媒の共存下において、珪素アルコキシドを加水分解することにより、ゲル化とスピノ-ダル分解がほぼ同時に起こり得る条件を探索し、マイクロメートル領域の多孔構造形成過程を追跡した。相分離によって起こる濃度揺らぎの時間発展を、He-Neレーザーを光源とし、フォトダイオードアレイを検出系とした光散乱装置を用いて、1秒ごとに時間分割追跡した。まず、相分離初期の濃度揺らぎの時間発展が指数関数的であり、波長一定の期間が存在することを確認した。このことは、相分離過程がスピノ-ダル分解機構に従って起こっていることを示していた。次に、出発組成や反応温度を変化させて、ゾル-ゲル転移と相分離過程の開始時期の相対関係を変化させたところ、以下のことが明らかになった。 (1)相分離過程がゾル-ゲル転移よりも十分早く開始すると、散乱プロファイルは多くの液-液相分離系で見られるのと同様な時間変化を示し、その後期過程においてゾル-ゲル転移に起因すると推察される構造の凍結が起こった。 (2)ゾル-ゲル転移による網目形成に並行して相分離過程が開始すると、ドメインの形成過程は相分離開始が遅いほど減速され、構造凍結はより早く起こった。 (3)ゾル-ゲル転移が開始して十分時間が経ってから相分離過程が進行する場合には、ほとんど濃度揺らぎの周期波長は変化しないまま、網目内の濃度コントラストだけが拡大して、比較的規則正しい多孔構造が形成された。
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