高性能磁気塗膜媒体を作製する際、優れた電磁変換特性を得るためには、磁性塗料中での磁性粒子分散性を向上させることが非常に重要である。しかし、塗料中における磁性粒子分散性を直接評価する方法は確立されておらず、一般的には塗料を希釈して粒度分布測定を行うか、あるいは塗膜にした後その光沢度や表面粗さ、静磁気特性等を測定することによって間接的に評価しているのが現状である。そこで本研究では、塗料中における磁性粒子分散性を直接評価することを目的として定圧濾過テストを行った。この評価方法はある大きさのメッシュを持つフィルターに一定圧力で塗料を供給して塗料の濾過性を評価する内容である。ここではフィルターメッシュサイズを1mum、圧力を2kg/cm^2とした。なお、試料としたバリウムフェライト磁性塗料は、配合を一定とし、塗料作製時の分散時間のみよって粒子分散性を変化させた。 分散時間の異なる試料について定圧濾過テストを行ったところ、分散初期の試料においては吐出量はゼロであったが、分散時間の増加に伴い塗料の濾過性は向上し1mum以上の凝集粒子が減少しているのが確認された。ここで、「磁性塗料の濾過開始60秒後までの総流出量」と「磁性粒子を含まないバインダー溶液の濾過開始60秒後までの総流出量」の比を「分散度」と定義し、各磁性塗料について分散度を求めた。この分散度は塗料中での粒子凝集構造を反映する尺度である。分散度は分散時間と共に増加した。求めた分散度は静的レオロジー測定から得られる降伏値と類似した傾向を示し、また粒度分布測定から得られたメジアン径との間に負の相関が見られた。これらのデータを総合して粒子凝集構造モデルを今後作成する予定である。以上のように定圧濾過テストを導入することは、磁性塗料中における粒子分散性を直接評価する際に有用であることが確認された。
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