平成4年の研究によりアルミナの高温変形能の限界は、変形中の粒成長によることが明らかとなっている。本年度は、高温変形中の結晶粒成長を制御することによって、塑性加工に対して十分な高温変形能の発現をを目指した。そして以下の様なことが明らかとなった。 1.高純度でサブミクロンの結晶粒を有する純アルミナで20%、0.1wt%のマグネシア添加材では、80%程度の高温伸びが得られる。そして、正方晶ジルコニア多結晶(TZP)とは異なり、中間の試験温度とひずみ速度で最大伸びが達成される。これらのアルミナの変形限界は、材料にかかわらず変形温度とひずみ速度によって一義的に決まる一定の結晶粒経に達した時点でキャビティーが導入される。 2.変形初期における過度の結晶粒成長を抑制するために行なった変形中に試験温度を徐々に上昇させる試験において、0.1wt%マグネシア添加材において110%を越える引張り伸びが得られた。 3.純アルミナ、マグネシア添加アルミナ、TZP、アルミナーTZPなどのセラミックスの静的な結晶粒成長と高温変形中の粒成長の解析により両者の間に極めて良い相関関係が存在する。すなわち、静的な結晶粒成長が十分に遅い材料は、高温変形中の粒成長も遅く、大きな高温変形能が期待される。 4.アルミナに対するマグネシアの添加量を増加させると焼結性が悪化するとともに静的な結晶粒成長が遅くなる。特に1wt%を越えるとスピネル相が出現し、初期の粒径は若干大きくなるものの、その後の粒成長が顕著に抑制される。 5.1400℃で焼結可能な最大量の5wt%のマグネシアを添加した試料は、アルミナースピネル(19vo1%)2相組織を構成し、高温での結晶粒成長が極めて遅い。そして、本試料において従来のアルミナセラミックスの引張り伸び値を数倍上回る400%の伸びが得られる本系の塑性加工の可能性を十分示すことができた。
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