光合成の光反応中心の巧妙な電子移動反応は分子を組織化することによってはじめて可能になると考えられている。我々は光合成反応中心における光誘起電子移動の研究の新しいアプローチとして、超分子構造であるドナー(D)-アクセプター(A)連結化合物の貫入型シクロデキストリン(CD)錯体系を用いて長距離光誘起電子移動を蛍光測定によって検討した。 カルバゾールとビオローゲンをつなぐスペーサー部分がメチレン鎖16の化合物(1)とビフェニル基を導入した化合物(2)は水溶液中でalpha-シクロデキストリン(CD)が2個メチレン鎖に包接した貫入型CD錯体を形成することがNMR解析によってわかった。CPKモデルによち、1、2はCD錯化によってDとAの距離を長距離( 〜20∠)に固定できることがわかった。 カルバゾール励起1重項からのビオローゲンへの光誘起電子移動反応を蛍光寿命によって検討した。1の蛍光寿命(11.3ns)はビオローゲンの無い参照化合物の蛍光寿命(11.8ns)とほとんど変わらなかった。よって、1では励起一重項からの電子移動反応は距離が遠すぎてほとんど起こってないことがわかった。 これに対して、2の蛍光寿命(8.8ns)は明らかに1の錯体の蛍光寿命より短くなった。よって、この光誘起電子移動は連結スペーサー部分のpi系部位によって促進されていることがわかった。従って、本研究によって貫入型CD錯体系の長距離光誘起電子移動は超交換機構におけるThorough-bound機構によって起こっていることがわかった。
|