1.まず、塩化金酸とアルコキシシランを出発物質とするゾル-ゲル法によって合成される金微粒子分散シリカコーティング膜の微細構造に及ぼす合成条件の影響を検討した。テトラエトキシシラン-水-エタノール-塩酸-塩化金酸四水和物からなる溶液を、シランの加水分解・重合反応によりゾルとし、これをコーティング液としてディップコーティングにより作製したゲルコーティング膜を500℃で10分間熱処理することによって、金微粒子分散シリカコーティング膜を得た。出発溶液中の水の濃度を高くする、あるいはゾルのエージング時間を長くすると、膜中に生成する金粒子は大きくなるとともに球形から長球に変化した。この微細構造変化によって、金粒子の表面プラズマ共鳴に基づくコーティング膜の光吸収ピークは長波長側にシフトした。また、出発溶液中のテトラエトキシシランの一部をメチルトリエトキシシランで置き換えると、金粒子の生成がより低い温度でおこること、コーティング膜中に生成する金粒子が小さくなるとともに球形化することを見出した。 2.つぎに、種々の貴金属を含有するチタニアコーティング膜を作製した。チタニア源としてチタンイソプロポキシドを用い、貴金属源として貴金属の塩化物を用いて、1.とほぼ同様の方法によってコーティング膜を作製した。粒径約20nmの金粒子を含有するシリカコーティング膜とチタニアコーティング膜の光吸収スペクトルを比較したところ、シリカコーティング膜では約530nm、チタニアコーティン膜では約650nmに吸収ピークが存在し、マトリックスの高誘電率化によって光吸収が長波長側へシフトすることが確認できた。白金またはパラジウムを含有するチタニアコーティング膜を作製するためには、700℃ないし1000℃以上の温度で熱処理するか、または還元雰囲気中での熱処理することが必要であった。これらのコーティング膜は可視域の広い波長範囲で光吸収を示した。
|