二価カドミウムと直線状配位子から、内部空孔を有する錯体を得るとともに、この錯体が置換芳香族化合物を形状選択的に包接すること、さらにアルデヒド類のシアノシリル化反応を触媒することを見いだした。すなわち、硝酸カドミウムCd(NO_3)_2と4、4-ビピリジン(bpy)の反応により〔Cd(bpy)_2〕(NO_3)_2の組成を有する錯体1を得た。この錯体は結晶構造解析の結果、カドミウム原子(正八面体構造)のエクアトリアル位を4、4-ビピリジンが架橋配位した正方網目状無限骨格を有し、かつこの骨格が積層した構造であることがわかった。o-ジブロモベンゼン(2)存在下でこの錯体を調製すると、包接錯体{〔Cd(bpy)_2〕(NO_3)_2・(o-C_6H_4Br_2)_2}_∞(1・(2)_2)_∞が得られた。2の包接は極めて形状特異的であり、例えばo-およびp-ジブロモベンゼン1:1混合物より、包接錯体の形成により>99%の純度で2を分離することができた。さらに錯体1がアルデヒド類のシアノシリル化反応を形状選択的に触媒することを見いだした。例えば1(20mol%)存在下、ベンズアルデヒドとシアノトリメチルシランをジクロロメタン中で40℃、一晩攪拌することにより、O-トリメチルシリルマンデロニトリルが77%で得られた。 一方、Cd(NO_3)_2と4、4-ビピリジン(bpy)の反応で、濃度条件等を変えることにより、〔(bpy)_2Cd(mu-bpy)Cd(bpy)_2〕(NO_3)_4で示される構造の錯体が得られた。さらに、二座配位子として、PyCH_2CH_2Py(bpe、Py=4-ピリジル)を用いた場合には〔CD_2(bpe)_3〕(NO_3)_4の組成を持つ錯体が得られた。
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