1.粒子分散系エレクトロレオロジー(ER)流体における電場下での粒子の凝集は、粒子を凝集させる電気的な引力及びこの凝集を妨げるせん断力との競合で生ずると考えられる。本研究では、粒子分散系ER流体の階段状電場刺激に対する応力の過渡応答を計測し、電場下での粒子の擬集挙動を考察した。主な研究成果を以下に示す。 2.試料流体として、強酸性イオン交換樹脂をシリコーンオイル(粘度eta=0.02Pa・s)に30wt%で分散させた系を用いた。一定せん断速度(gamma<5s^<-1>)で変形する試料流体に階段状電場を印加し、電場印加後の応力の過渡応答を平行板型粘度計によって計測した。また、試料流体の誘電率をLCRメータで測定した。 3.電場強度(E)を1〜3kV/mmとした階段状電場に対する応力応答の測定において、S/N比が従来の実験結果に比べて大幅に向上した結果が得られた。この応力の応答を指数関数型の応答で表現したが、従来と同様、複数のモードによってのみ良好なフィッティングがなされた。この際、応答の極く初期に従来では認められなかった応答の存在が示唆されたが、現時点においては、力学検出系の特性に依存する可能性も否定できていない。また、応答時間のtauiの電場強度及びせん断速度依存性を、Mason数(Ma=etagamma/2epsilon_0epsilon_cbeta^2E^2)に対してプロットした結果、tauiは電場強度に対するよりは、せん断速度に対して強く依存する傾向を示した。ここで、beta=(epsilon_p-epsilon_c)/(epsilon_p+2epsilon_c)と定義される量であり、epsilon_c及びepsilon_pは、それぞれ分離媒及び分散粒子の比誘電率、epsilon_0は真空の誘電率である。誘電体粒子対モデルでは、tauiはgammaの増大に対して増大すると予想されるが、実験結果は逆の傾向を示した。本実験のように、濃厚な粒子分散系における低せん断速度の変形では、せん断力は分散粒子の凝集を妨げる効果としてでなく、促進する効果として働くことが示唆された。
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